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メカニズム / なぜスプールが回転するとクリックが鳴るか?

左のサイドプレートに、スライド式のクリックON・OFFスイッチがついていますが、その内部の機構についてお話します。7000シリーズと9000シリーズでは機構が異なりますので、それぞれ解説します。

[写真1] Ambassadeur 7000 の左サイドプレート

[写真2] Ambassadeur 9000CL の左サイドプレート

Ambassadeur 7000

写真3をご覧ください。左サイドプレートを取り外して内側を見た写真です。クリックスイッチはクリックポールのシャフトに連結されています。クリックONのポジションは写真中の①、OFFのポジションは②になります。クリックポールはシャフトを中心に回転しますが、トーションスプリングにより、常に反時計回りに押しつけられています。押しつけられるストッパー部には①と②のポジションに対応して少しくぼみがあり、これによってON・OFF切り替え時のクリック感を出しています。
 
ON・OFF切り替えをするときは、クリックポールが矢印方向(時計回り)に回転するとともに、クリックアークも矢印方向の時計回りに回転し、これらが連動することで、ちょうどいい感触でストッパーの二か所のくぼみNO/OFFを乗り上げるようになっています。クリックアークは、先に説明したクリックポールのシャフトと、コイルスプリングで連結され、お互い引き合うようになっています。

[写真3] 左サイドプレートの内側(Ambassadeur7000)

[写真4] クリックギヤ(Ambassadeur7000)

クリックポールが①のポジション(クリックON)の時、クリックポールの先端は、写真4のクリックギヤに噛みあいます。クリックギヤはスプールとともに回転します。スプールが回転すると、スプールギヤがクリックポールの先端を断続的にはじくことにより、クリック音を発生します。クリックギヤの歯形は通常のギヤと異なり、クリックポール先端の丸みに対応した形状になっています。
 
クリックONの状態でラインが引き出された場合は、クリックアークが時計方向に回転することでクリックポールが反時計方向に回転可能となり、ギヤにはじかれます。またクリックONの状態でラインを巻き取る場合は、クリックポールが時計方向にギヤによりはじかれます。
 
こうして、スプールがどちらに回転しても、クリックポールをクリックギヤがはじいてクリック音を発生することができます。
 

Ambassadeur 9000CL

先に述べた通り、7000シリーズのクリック機構はスプールの回転方向に応じて機構動作が異なりましたが、9000シリーズの場合はスプールがどちらに回転しても線対称な機構によって同じ機構動作をします。
 
写真5は、左サイドプレートを開けた写真です。黒いクリックギヤ、クリックポールを両サイドからコイルスプリングによって挟み込むように白い樹脂アームが配置されています。この樹脂アームは、クリックON・OFF切り替え時のクリック感を出すための働きと、スプールが回転した時にはじかれたクリックポールの回転姿勢を復元するという二つの働きをします。
 
写真6は部分拡大写真です。スプールとともにクリックギヤが黄色矢印方向(反時計回り)に回転した場合、クリックポールは時計回り(写真の上方向)にはじかれますが、二つの樹脂アームはそれぞれ青矢印のように反対方向に変形し、これによってクリックポールを中立の姿勢に戻すための復元力を発生することができます。

[写真5] 左サイドプレートの中(Ambassadeur9000CL)

[写真6] 部分拡大写真(Ambassadeur9000CL)

クリック音の比較

スプールが一回転した時のクリック数は、クリックギヤの歯数で決まります。7000は歯数が9個、9000CLは12個となっています。音質は7000が低音で、9000CLが高音です。印象としては、7000は落ちついて安定感があるクリック音、9000CLは軽快で細かいクリック音です。材質、機構とも異なる結果、このような音になっています。
  

ABUのコンセプトは?

ABU社がどのようなコンセプトのもとにクリック機構の使い分けをしているのか、関係資料を入手していませんので今のところ不明です。さらにABUの研究が進んだら、紹介したいと思います。

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