<< PREV  |  MENU  |  NEXT >>
序論 / ABU研究会発足

フィッシュ・オンとABUの普及

「それはスウェーデンの南部に属する一地方の一点である。日本人の耳には”スヴァングスタ”ともひびき、”スヴェングスタ”ともひびく名の村がある。」 この文は開高健の名作「フィッシュ・オン」における「スウェーデン」の章の冒頭部分です。スヴァングスタとは、ABU社の母体であるHALDA社の創業の地として有名で、著者はこの地に建つABUのゲストハウスに招かれたことを作品の中で語っています。
 

ABU5000Cを紹介した開高健の名作「フィッシュ・オン」


この中で紹介されているのが、ベイトキャスティングリール「ABU5000C」。それ以前から日本でもABUは知られていたに違いありませんが、この作品をきっかけとして5000Cの普及が加速したと言われています。「フィッシュ・オン」が出版されたのが1974年です。
 
日本には、S社、D社という二大リールメーカが存在するにもかかわらず、今でもABUファンが数多く存在します。一口にABUファンと言っても実は二種類いるようで、ひとつは希少価値の高いビンテージリールを追い求める収集派(一部ではアブマニアとも呼ばれているようです)、そしてもうひとつは私も含めリールのコンセプトと使い勝手に惚れこんだ実用派です。このことは、ABUのリールの奥深さを示すもので、創業当時から受け継がれてきた品質への徹底したこだわり、細部まで行き渡る機能美と外観の美しさ、購入したらメンテナンスしながら一生使い続けることを前提にした設計コンセプトとアフターサービスなどに裏付けられています。アンバサダーシリーズなどのように半世紀以上にもわたり基本設計を継承し続けているにもかかわらず、時代遅れの感がないどころか、手に馴染んでより愛着が増し、持つ喜びと使う喜びが湧いてきます。
 

ABU研究のはじめに

ベイトキャスティングリールから釣り具製造を始めたABUですが、スピニングリール、クローズドフェースリール、ロッド、ルアーまで手がける総合釣り具メーカーです。世界中の釣り愛好家から支持されているため、ABU製品の情報のみならずABUの歴史に関してもインターネット上で紹介されています。鯉釣りにベイトキャスティングリールを多用しているのは日本だけのようですので、私はできるだけ鯉師の視点でABUを語ってみたいと思います。特にアンバサダー7000、9000シリーズにフォーカスして進めるようにします。
 
尚この先のお話は、主に写真に示す書籍の内容に基づき、かつ私なりの解釈で進めて行きたいと思いますが、ABUの歴史上の出来事は可能な限り書籍の記述に従います。
 
主な参考書籍

  • 「ABU and Garcia WHAT HAPPENED?」 Len Borgstrom ISBN 1-4243-0051-7 Printed in the U.S.A 2006
  • 「ABUリール大図鑑」 中山蛙 グリーンアロー出版社 ISBN978-4-7663-3248-3

 

ABU社3代目社長レナートによるABU・Garciaにまつわる回顧録

  

ABU社の歴史と歴代の名機を掲載した図鑑(2007年版)

 
会員1名のこの研究会が、次回以降どう展開していくのか、そしていつまで続くのか私自身全く予想がつきません。先に述べたように、実用派の立場でABUに対する興味と疑問が続く限り継続していきたいと思いますので、温かく見守って下さい。

<< PREV  |  MENU  |  NEXT >>