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プチサイエンス / 第2科学館:偏光グラスの不思議

陽射しが強い日、あるいは夕暮れ時になど水面を眺めていると、太陽の角度によっては水面からの反射光が非常に眩しい時があります。私は時々ウキ釣りをしますが、ウキを見つめているときに水面からの反射光が目に入ると、とても疲れてしまいます。そんな時に活躍するのが、釣り人なら誰でも知っている偏光グラスです。偏光グラスは単に反射光が少なくなるだけではなく、水中の魚も見えやすくなります。 一般のサングラスだと全体が暗くなるだけですが、偏光グラスはどうしてこんな不思議な見え方をするのでしょうか。
 

1.「光」ってなに?

光とは電磁波の一種です。携帯電話やテレビの電波の仲間ですが、これらに比べて周波数が100万倍くらい高いのが光です。目に見える光の場合の周波数は、数百テラヘルツ(THz)帯です。また「波」と呼ぶ以上は水と同じように山谷の振動があり、一周期(例えば山と山の間隔)を波長といいます。図に示すように、波長は色と対応しています。人間の目で感知できる波長は、約400~760ナノメートルの範囲とされており、この波長帯域の光を「可視光」といいます。これより短い波長の光を「紫外線」、長い波長の光を「赤外線」と呼びます。1ナノメートル(nm)は、0.001マイクロメートル(μm)、つまり百万分の一ミリメートルです。光は超高周波数で超短波長の電磁波であることがお分かりになったでしょうか。
 

   

2.それじゃ「偏光」ってなに?

光の波は進行方向に対して垂直な方向に振動する性質を持っています。太陽から地上に降り注ぐ自然光も例外ではありませんが、進行方向に垂直ではあっても同じ方向に振動する光ばかりではなく、色々な方向に振動する光が混じっています。こうした自然光が水面に照射された途端に面白い性質を見せます。水面で反射しやすい光と、水中に透過しやすい光とに分離されます。反射しやすい光をS偏光、透過しやすい光をP偏光といいます。つまり偏光とは特定方向に振動している光の状態を言います。自然光のように振動方向がランダムである状態を無偏光と言います。
 

3.偏光グラスのはたらき

「光」と「偏光」について理解したところで、次に偏光グラスのはたらきについてお話します。 偏光グラスは「偏光フィルム」と呼ばれる特殊なフィルムを用いたサングラスです。偏光フィルムとは、特定の振動方向の光だけを透過し、それ以外の振動方向の光をカットする性質を持っています。例えば、分子レベルの隙間をもった窓用ブラインドをイメージしてみてください。ブラインドの隙間方向に振動する光は透けて見え、それと直交方向の光はカットしているわけです。ブラインドの隙間を縦方向にすると、水面で反射した光はS偏光で、横方向の振動の光ですからカットされます。一方、水中に入射する光はP偏光で、縦方向の振動の光ですから、ブラインドを透過してきます。このようにして、水面で反射したギラギラが見えなくなり、水中にいる鯉の姿が見えやすくなるのが偏光グラスです。

 
偏光グラスをかけたまま顔を横に傾けると、次第に水面のギラギラがはっきり見えてきて、水中が見えにくくなります。また、偏光グラスをかけたままデジカメの液晶画面をみると、顔がある角度に傾いた時に画面が真っ暗になって見えなくなります。液晶画面は偏光を利用して表示していますので、その画面をさらに偏光グラスを通して見るのでこのようなことが起こります。
 
さらに、一眼レフカメラをお持ちの方はご存知かもしれませんが、レンズの前に付ける偏光フィルター(PLフィルター)というのがあります。これも偏光グラスと同じで、反射光をカットして映像のコントラストを良くする働きがあります。このように、偏光は意外に身近なところで利用されています。

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